
日本酒の製造技術をベースにしたクラフト醸造所「天郷醸造所」(福智町上野)が完成し、5月11日に記念セレモニーが行われた。
社長の中山雄介さんと醸造家の上田竜志さんの2人を中心に酒造りを始める。醸造所は、かつて町営青年の家として使われていたが、取り壊された後、何十年も使われていなかった場所に一から建設した。福智山を背に、眼下にはレモン畑が広がる。
中山さんは防衛大学卒業後、コカ・コーラ、アマゾンジャパン、楽天で食品飲料や酒類事業に関わった後、日本産酒類・食品の販売支援で起業。福智町がまちづくりの一環として実施した誘致事業に応募し選ばれたことがきっかけで、同所で醸造所を作ることを決意したという。資金集めにはクラウドファンディングも活用した。
上田さんは大学卒業後、「獺祭(だっさい)」などを手がける旭酒造と永山本家酒造場で酒造りに従事。その後、同町の誘致事業に応募したが落選。公募に通った中山さんから一緒に酒造りをしないかと持ちかけられ、地域おこし協力隊として同町に移住した。「一年中、酒を醸造することを考え、しっかり断熱できるようにした。最短距離で物が運べるように建物内の導線も工夫した。心に寄り添い、心を動かす酒造りをしたい」と話す。
中山さんは「自然のもの、土地のものにこだわり、自然に寄り添って酒造りをしたい。地元の農家と連携し、福智町産の米やレモン、イチジク、ハーブなどを原料とした酒を造る。生まれ故郷である福智町、日本が誇る伝統産業である酒、そして日本人の誇りを再興したい」と意気込みを見せる。
2025年秋ごろの初出荷を目指す。