環境省のプロジェクトの一環で、福島の10~30代の若者でつくる「ふくしまメッセンジャーズ」が11月28日、麻生看護大学校(飯塚市芳雄町)を訪れ、同校生らと「福島の今」をテーマにディスカッションを行った。
「ふくしまメッセンジャーズ」のメンバーの(左から)佐藤大亮さん、齋藤望乃さん、黒澤瑞季さん、坂田直香さん=福島の若者、飯塚の看護学生と本音で交流
同交流会は、東京電力福島第1原発事故に伴う放射線の健康影響に関する誤解や不安を払拭することを目的に、環境省が展開する「ぐぐるプロジェクト」の一環。メッセンジャーズが同年代の若者と対面で直接ディスカッションを行うのは今回が初めて。
ディスカッションでは、麻生看護大学校生が、昨年の研修旅行で福島を訪れた際の印象を発表した。岩本春菜さんは「津波があったとは思えないほど緑が豊かで美しい場所だったが、伝承館に残された卒業式の式典跡を見て、震災の事実を改めて感じ身が引き締まった」と話した。
これに対し、メッセンジャーズのメンバーは福島で暮らす当事者としての経験を語った。齋藤望乃さんは「震災当時は小学1年生。他県に引っ越すと『放射線が移る』といじめられたという話も聞いてきた。怖いと思うのは当然だが、正しい情報を知ることが大切」と訴えた。
メンバーの佐藤大亮さんは、大阪でのイベントで「福島の空間線量より大阪の方が高いことに驚かれた」というエピソードを紹介。「遠い地域でも、自分事として捉えてくれる人がいることに手応えを感じた」と語った。
未来の医療従事者として、学生たちは放射線に関する知識をどう生かすかについても議論した。藤井煌也さんは「以前は放射線は危険というイメージだけだったが、今後は数値なども加味し、医療現場で適切に判断したい。患者さんにも正しい情報を提供できるようになりたい」と決意を述べた。
環境省の山崎功浩参事官補佐は「原発から離れた福岡の皆さんと福島の間にはギャップがあるかもしれないが、今日の直接交流を通して、そのギャップを埋めてもらえたらうれしい」と話した。
同校の鈴木葉子校長代行は「今回の対話を聞き、学生たちは福島の研修での体験から学んだことを、自分の言葉で語れるまでに成長していると感じた。正確な情報を知ることの大切さを胸に、素晴らしい看護を提供してほしい」と述べた。